株式会社障がい者つくし更生会  見学レポート

 はじめに名は体を表すと言いますが、社名に「株式会社」と「障がい者」と掲げられており、その意 味について私は「障がい者の組織であり株式会社として利益を出します」と宣言されているのだと捉えました。そして、その堂々とした姿勢について見学した最後には納得することになりました。その内容についてお伝えします。

福岡県にある株式会社つくし更生会様は従業員数37名、うち障害者は32名、健常者5名の法定雇用率102.7%を誇る株式会社です。同社は大野城市からごみ処理とリサイクルの仕事の委託を受け、昭和60年から現在まで仕事の質で高い評価を得て、継続して委託を受け続け、黒字経営を続けておられます。

障がい者雇用では普通に支給される各種の補助金などを一切受けず、事業として成り立たせています。委託と継続においても、障がい者雇用のみを評価されているのではなく、その仕事ぶりを評価されており、具体的には他社の施設では起こる爆発事故はゼロ、汚れの無い通路、きれいに使われ続けている建物、25年使い続けてきた機械をメンテナンスする業者からの誉め言葉「この機械をこれだけ使い続けている状態として絶品です」と、健常者が経営する施設と比較しても高い評価を得ています。

専務取締役の那波和夫様から施設を回りながら詳しく説明していただきました。
歩きながらゴミ処理と聞くと連想する匂いが無いことに気づきます。
缶やビン、ペットボトルやプラスチック容器の選別をベルトコンベアが動く中、障がい者の従業員がひとつひとつ手作業で行う様子を拝見しました。色付きガラスや耐熱性ガラスなど素人ではわからない分別を一瞬のうちに判断して選び取り出す様子に、簡単な仕事ではないことが十分にわかります。

ある従業員の方にゴミと資源の分別の説明をしていただきました。とても分かりやすく説明していた だいたこの方も知的障がいがあるかたであり、那波専務から彼が見学者への説明が出来るようになるまでのエピソードをお聞きしました。
当初、専務が説明を担当するように指示したところ「できません」と拒否されたが、話をじっくり聞 くと「やったことがないからできません」であると分かり、本人の言葉を鵜吞みにせず、相手との関係性をもって「やったことがないけど、やれますか?」と接し、これに対して本人は「やってみる」になり、現在は「私の仕事」として自ら人前に自信をもって出られるようになったそうです。

また仕事が出来るようになり、自分自身への肯定感と、ご両親への許し(親にも知らないことがある、だから家庭内でいろいろ上手くいかないこともあったとの理解)から、家庭内暴力が無くなったエピソードを聞き「労働環境での成長とその影響の範囲の広さ」に私自身の視野が広がりました。

障がい者が中心となり働き、利益を上げ、これによって事業が継続され、皆さんの居場所が継続されてゆく様子に、驚きを持ちましたし、他社では実現が難しい現状があると知っているからこそ、その奇跡を実現されている様子に希望を持ちました。

訪問し、お話を拝聴して、きっと当社が取り組まれている多くは前例が無く、臨機応変な対処の連続だと想像します。これら那波専務を中心とした皆さんの経験やその姿勢に、我々が学ぶことは多くあると思います。今後もよろしくお願いします。

「いい会社」研究会・TNC・なると社会保険労務士事務所 成戸克圭(作成:2021年10月28日)

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