日本理化学工業株式会社見学レポート

レポート

日本理化学工業株式会社

住所神奈川県川崎市高津区久地2丁目15番10号
代表者代表取締役 大山 隆久
設立昭和12年2月13日
資本金2,000万円
事業内容ダストレス事業部-文具、事務用品製造販売 ジョイント事業部-プラスチック成形加工
社員数84名(うち知的障がい者62名)平成31年2月現在 昭和35年より障害者雇用を始める
公式ページhttp://www.rikagaku.co.jp/
訪問日2017年4月19日(水)
訪問者北澤裕美子 北澤知也
手記北澤裕美子

経営方針

  1. 顧客の視点に立ち、商品を開発し、つねに最良の製品をもっとも良心的に供給する
  2. 社会に貢献する強い意志をつねに持って、誠実と信用を基とし、堅実経営を貫く
  3. 全従業員にとってつねに能力を十分に発揮でき、幸せな人生を送れる職場とする
  4. つねに時代と照らし合わせ、短期・長期の目標を掲げ、つねにチャレンジする心を忘れない
  5. 会社と社員の成長のために経営計画の4原則PDCAを遵守する

経営理念

当社は、人と人をつなぐために私たちの商品、仕事の質、そして、私たち自身の人間性をつねに高め続けます。 また、全従業員がつねに「相手の理解力に合わせる」という姿勢を大事にし、素直な心でお互いを受け入れ、理解・納得をしながら成長していくことで、物心両面の働く幸せ(役に立つ幸せ)の実現を追求していきます。 そして、徹底的に障がい者雇用にこだわり、よりよい皆働社会の実現に貢献していきます。

行動指針

  1. 私たちは全従業員の物心両面の働く幸せを守り、さらに高めていきます。
  2. 私たちは、永続的な幸せを感じ続けるために、自らの人格を高めていきます。
  3. 私たちは、感謝の心を忘れず、相手の役に立つことを行っていきます。
  4. 私たちは、周利槃特(しゅりはんどく)のごとく、自らの役割に真剣に取組みます。
  5. 私たちは、周りの人の成長に役立つことで、自らの成長を追求していきます。
  6. 私たちは、現状に満足をせず、常に報連相を通じ自己の成長をはかりながら、毎日の創意工夫を積み上げていきます。
  7. 私たちは、日々の活動ではPDCAを遵守しながら目の前の目標を達成し続けることにこだわります。

ビジョン/目標

日本一強く、優しい会社を目指す。 経営的にも強く、精神的にも強く、人に優しく接することができ、人と環境に優しい商品を作り続ける。

「働く幸せの像」

彫刻制作及び寄贈  松阪 節三 刻まれた言葉: 導師は 『人に愛されること、 人にほめられること、 人の役にたつこと、 人から必要とされること、 の4つです。 働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのです』 と。 「その愛も一生懸命働くことによって得られるものだと思う」 社長 大山 泰弘(現会長) 平成10年5月

大山泰弘会長が出迎えてくださり、お話をうかがいました。 障がい者も全員働くことができる「皆働社会」にしたいという熱い想いがひしひしと伝わってきました。

工場内は、とてもきれいでした。 5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)に安全(Safety)を加えた6Sを重視して仕事に取り組んでいます。 障がいのある社員も6S活動(グループ活動)を通じて、皆のお手本になりながら、6S委員、班長として引っ張っていけるように、全社で成長支援を行っています。

大山泰弘会長のお話から

知り合ったご住職から「人間の究極の幸せは、『愛されること、ほめられること、役に立つこと、必要とされること』である。 施設では、『あなたがいないと困る』とは言ってもらえないが、会社であれば、頑張っていることを認めてもらい、感謝される。 それが人間としてうれしい、幸せだから毎日会社に来る。 福祉施設が人間を幸せにするのではなく、企業が人間を幸せにしてあげられるのだ」と教えていただき、そこから、一人でも多くの障がい者に働く場を提供できる会社にしようと決意されたとのことです。

班長制度もあり、規則がしっかりと守れて、周りの人に親切に教えてあげられる人を選び、班長にしているので、班長が課長の助手役まで果たしてくれて、最小の健常者の職員で稼働できています。

障がい者雇用率が75%を超しているのは、障がい者雇用の助成金制度ができる4年前に、障がい者雇用50%、そのうち半数を重度障がい者の雇用をすれば、金利4.7%を20年償還で融資するというモデル工場制度を国がつくり、国からのすすめもあって、その制度を活用して昭和50年に川崎にモデル工場をつくったからです。

会長は、重度障がい者を多数雇用してきた50年の中で、彼らの働く姿から、人間の本当の幸せとは何かを考えることができたと話されていました。 ベルギーに海外視察に行かれ、素晴らしい制度を知ったそうです。 ベルギーでは、重度の障がい者に働く場を提供し続けると、国が最低賃金を企業に代わって障がい者に支払うという制度を設けています。

2009年に渋沢栄一賞を受賞されていますが、そのときに、「日本では、福祉施設で20~60歳までケアすると、総費用は40年間で一人2億円ほどかかる。 日本理化学工業では、50年の重度障がい者雇用の中で、60歳定年まで勤めた方を5名も卒業させている。それは10億円の国の財政を減らした大きな貢献に相当するからです」と言われたそうです。 今現在は10名卒業しています。 それで、ベルギーの制度が人間の幸せのためにも合理的であることに気付いたとのことです。

工場内での様子

社員の約75%が、知的障がい者で、そのうちの半分以上がIQ50以下という重度の障がい者であるが、みなさん活き活きと働いていらっしゃり、重度の障がい者とは 思えないことが驚きだった。 間違えることなく、不安にならずに継続して働けるよう、様々な工夫がされていた。 乾燥したチョークの最後のチェックは目で見て行っていたが、声を出して確認をしていた。 また最後の箱詰めも、長年働いている方が、健常者と変わりなく、手早く作業されていて、その仕事ぶりは、見事であった。

計量の工夫

会社にひとりで通うことができているということは、信号の色は判断できていることに気づき、材料の計量には、赤と青の色つきのバケツを使っている。そして、必要な重量のおもりも同じように赤や青に塗って、秤にのせて、針が真ん中で止まったら下ろすように指導している。 文字や数字が読めなくても、間違わずに計量できるように工夫されている。

大きさのチェック

できたチョークを入れて、真ん中で止まれば完成品。小さいと下に落ち、大きいと入らないというように、不良品がすぐに判断できる型をつくっている。

感想

障がいがあるからできないと決めつけることなく、どうしたらできるようになるかを考え、様々な工夫がされていて、長年の努力の積み重ねの結果であることが実感できた。 会社のやり方に合わせるのではなく、その人のできることを探していくという優しさがあちこちに感じられて、感動であった。 その結果、重度の方も人の役に立つことができ、必要とされる人として、活き活きと働くことができている。 とても重度の方とは思えないほど、皆さん自信に満ちて仕事をされていた。 たくさんの会社が重度障がい者を雇用できたら、国の財政も減らしていくことにもなる。 今後益々加速する高齢化社会において、障がい者が税金を使うのではなく、税金を納めるように自立していくことが、とても大切と思います。 日本理化学工業のような障がい者に配慮ができる会社がたくさん増えて、すべての障がい者が社会の役に立つ存在として、皆働社会が実現できたら素晴らしいと思うと共に、そのような社会になるよう活動をしていきたいと強く思いました。

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